植物に負担の少ない大きさを目指す
鉢栽培では、土のない場所に植物を持ち込めることや本来は育てることができない熱帯、亜熱帯の植物を育てることができる代わりに、自然環境下に近づけるちょっとした工夫が必要になります。
植木鉢の大きさもその一つ。
植物を入れ物の中で育てる鉢栽培にとって、鉢の大きさや深さに心くばりすることは、植物になるべく負担をかけずに栽培するためにとても大切です。
この記事では植物の大きさと植木鉢の大きさの関係について、植物の根の特徴を考え合わせながらわかりやすくお伝えします。
植木鉢を少しずつ大きくするワケ

植物は本来、地面に根を張って生きていますが、限られたスペースの鉢栽培では植物の特性に合わせて植木鉢を選ぶ必要があります。
鉢植えと地植えとの一番の差は土の量。
地面に植えられた植物は制限なく根を張ることで体も大きくなりますが、植木鉢で育てる場合は根の伸びるスペースが限られていることで、生長も制限されます。
このことは、植物のために用意された場所が限られる鉢栽培にとってはメリットでもあります。
植木鉢を大きくすれば、もちろん植物も大きく育ちますが、一度に鉢を大きくし過ぎると水を与えても鉢内に水が行き渡らず乾燥したり、逆になかなか乾かなくて過湿になり、かえって植物を痛めてしまうことになります。
植物は根の先端から数ミリのところにある「根毛」と呼ばれる部分で水分や養分を吸収し、他の部分はそれらを葉や花に送るパイプの役割をしています。
植え替えのたびに一回りずつ植木鉢を大きくすることで根の伸びるスペースを少しづつ広げていくことは、植物が健康で緩やかに生長するためにはとても大切です。
根は鉢壁にぶつかると、そこで枝分かれして鉢全体に分布します。
根が伸びて鉢内に回ったら、少し大きな鉢に植え替えて枝分かれさせて根を増やし、さらに大きな鉢に植え替えて根を増やすことを繰り返していくことで、植物は気持ちよく成長していきます。
少しずつ鉢を大きくしながら育った植物は根の量が多く、しっかりとした株になるだけでなく、常に成長をしているので若々しい元気な株になるのです。
植物の高さによって鉢の高さも変わる
植物によって根の長さは違い、それに見合った植木鉢の深さが必要です。
植木鉢は深さによって、スタンダード(普通)鉢、浅鉢(平鉢)、深鉢の3種類に分類されます。
号数は植木鉢の開口部分の大きさによって決まるので、同じ号数でも深さによって土の量も変わり、向いている植物も変わります。
ただ、一つ一つの植物の根がどのようになっているかを知ることはなかなか難しいもの。
そんな時、店頭で植物が植えられているポリポットやプラスチック鉢は、植物の根の形状のヒントになります。
ツツジ科の植物は根が浅く、ラン科の植物は管のような根が張り巡らされるといった特徴的な根を持つ植物はありますが、基本的には自然下では見えている体の姿=根の姿であることが一般的です。
上に伸びる力が強い植物は根の伸びる力も強く、横に広がる葉を持つ植物は根も横に広がっていると考えることは、植物が体を支えてるためには当たり前のことかもしれません。
深さによる鉢の分類

植木鉢は深さによって、普通鉢、深鉢、浅鉢の大きく3種類に分類されています。
普通鉢
鉢の高さが口径と同じ植木鉢で、ほとんどの草花を植えることができます。標準鉢とよばれ、一般的に植木鉢というとこのタイプを指し、鉢の口径のサイズで大きさが決められています。「号」の単位で表し、1号は昔の1寸で約3cm。10号鉢は尺鉢と呼ばれています。植木鉢のサイズについては、「号数ってなに??植木鉢の大きさを詳しく知りたい!」で詳しくお伝えしておりますので、そちらをご覧ください。
深鉢
鉢の高さが口径以上の鉢で、普通鉢よりも高さがあるのでスマートなタイプの鉢で、シンビジウムやユリなど根が深く張る植物に向いています。深さがある分、水持ちの良さが特徴ですが、底に水がたまりやすいので、過湿を嫌う植物の場合は底にゴロ石を多めに入れたり、腐葉土が3割ほど入った通気性のよい培養土を使うなど、土の配合を工夫するとよいでしょう。
浅鉢
鉢の高さが口径よりも小さい植木鉢のことで、平鉢ともよばれています。根が浅く横に張るサツキやアザレアなどツツジ科の植物やイネ科の植物、草花を使った寄せ植えや小さな球根のまとめ植えなどに向いています。根の生育を押さることで、結果として枝葉を小さく仕立てる盆栽などは基本的にこのタイプが使用されます。
水やりも大切
庭植えでは一度根づいてしまえばよほど乾燥しない限り生育に必要な水分は植物自身の力で得ることができますが、植木鉢の栽培では地中から水を吸い上げることができず、人間が水を与えなければ枯死してしまいます。
鉢栽培では、鉢の高さの下2/3の部分に根が多く分布しているのが一般的ですが、水やりの回数が多く、鉢土がいつも湿った状態でいると根は土の底に伸びていく必要がなくなり、表土のすぐ下あたりの浅い部分に集中してしまいます。
「水やりするときは表土が乾いてから」というのは、下の方にある水分に向かって根が伸びるためにはとても大切なこと。
せっかく根が深く伸びる植物に合わせて深鉢に植えても、頻繁に水を与え過ぎては植木鉢の深さを生かすことができません。
鉢栽培では植木鉢の選択とともに水やりもとても大切。
鉢の表面温度が上がったり下がったり、鉢表面からも水分が蒸散する鉢栽培は植物が過酷な状況に置かれることもしばしばです。
水を与えすぎて浅い部分にしか根のない植物は、風や温度差など過酷な自然環境に耐えることが難しくなります。
水やり3年といわれるように、植物に教えてもらいながら経験していくことで植物への知識が深まり、植物を育てる楽しさも増していくはずです。
植え替える鉢サイズの目安は

観葉植物の多くはプラスチックの鉢に植えられて販売されています。
植えてあるプラスチックの鉢がすっぽり入れば単純に一回り大きくなったことになりますが、行き場のない根がぐるぐると回っていることもしばしば。
植え替えるときは、鉢の直径だけでなく、鉢の高さも広げるようにしましょう。
買った時に植えてある一般的なプラ鉢のサイズと植え替える鉢サイズの目安は以下の通りです。参考になさってください。
大きなサイズ(ラージサイズ)の目安
高さ140~180cmの植物であれば、外寸27~30cm(9号~10号、尺)高さは一般的な長鉢(深鉢)で28.6~31.6cmのプラ鉢に植えられています。
植え替えには内寸35cm以上の鉢がおすすめです。
中くらいのサイズ(ミドルサイズ)の目安
高さ60~120cmの植物であれば、外寸18~24cm(6~8号)高さは一般的な長鉢(深鉢)で19.3~25.6cmのプラ鉢に植えられています。
植え替えには内寸20~28cmの鉢がおすすめです。
小さなサイズ(スモールサイズ)の目安
高さ50cmまでの植物であれば、外寸12~15(3~5号)高さは一般的な長鉢(深鉢)で10~16.2cmのプラ鉢に植えられています。
植え替えには、内寸12~18cmの鉢がおすすめです。
植物が大きくなり、これ以上植木鉢を大きくしたくないときは、根の整理が必要です。白く新しい成長する根は残し、古くなった根を中心にカットします。そのとき大切なのが見えている植物の枝葉も切りつめること。そっと土を増やす植え替えよりも植物の負担が大きくなりますので、この作業は必ず5月~9月の観葉植物の生長期に行いましょう。
深さ別、おすすめの植木鉢
普通鉢
ポリプロピレン樹脂製の大型ポットで衝撃に強く、とても軽量なので商業施設での使用にもおすすめです。底穴をふさぐ栓が付属されているので、鉢カバーとしても利用できます。外寸38、45、60cmの3サイズ。38cmは尺鉢に対応します。
洗練されたデザインとマシンメイドならではの土の締まりから生まれる薄さは、植えやすさ◎。優しい色合いなので仕上がりもとても綺麗です。中型サイズのシリーズです。洗練されたデザインとマシンメイドならではの土の締まりから生まれる薄さは、植えやすさ◎。優しい色合いなので仕上がりもとても綺麗です。中型サイズのシリーズです。
深鉢
ブラウンのボディに白い釉薬を吹き付けたモヤがかった風合いが個性的なポットで、ずっしりとした風格が魅力です。高温で焼きしめているので寒冷地での使用も可能。12、15、20、25号と大型サイズが揃います。
飽きのこないシンプルモダンなラインナップが人気のルッカシリーズ。PR1は艶消しのラウンドタイプで一番人気のデザインです。7、9、11、13号白黒の2色展開で、それぞれ対応する受け皿もあります。
浅鉢
ロクロ成形した跡が残るハンドメイドの素朴なテラコッタポットで、寄せ植えにも使いやすい6,8,10号です。デザインはとにかくシンプル。お求めやすい価格もうれしいポットです。
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